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IMPRESSION
2019年9月26日
ドイツからのライバルたちとも伍して戦える──新型レクサスRCFに試乗|LEXUS
Lexus RCF|レクサス RCF
ドイツのライバルとは異なる独自のテイストを獲得したレクサスのスポーツクーペ
2019年5月にマイナーチェンジを受けた、レクサスのスポーツクーペ「RCF」。単なるフェイスリフトではなく、エンジンや足回りから空力まで手が加えられたという同モデルに、モータージャーナリストの島下泰久氏が富士スピードウェイで試乗した。
Text by YASUHISA Shimashita
Photographs by HIROHIKO Mochizuki
「高い限界性能と、意のままに操る喜び」を求めた進化版
レクサスの2ドアスポーツクーペ「RC」のフロントに、V型8気筒5ℓ自然吸気エンジンを押し込んだハイパフォーマンスモデル「RC F」……と書くのは実は間違いである。そもそもRCはきわめて高いボディ剛性など、開発段階から“F”をラインナップすることを前提に開発されたサラブレッドなのだから。
デビューから4年と少し。いよいよ登場した新型RC Fは、高く評価されてきたそのパフォーマンスを、一層の高みへと押し上げた。そう、新型は単なるフェイスリフト版ではなく、「高い限界性能と、意のままに操る喜び」を求めた進化版なのだ。
スタイリングにも、そうした方向性が明確に表れている。各所に大きな開口部を持ち、空力性能にも徹底的に配慮されたデザインは、RC Fがこれまで参戦してきたGT500やGT3といったレーシングマシンにインスパイアされたもの。まさにレーシングマシン譲りのフロントリップ角のカナード、サイドのロッカーモール後端のえぐったような形状など、すべての要素が機能、すなわち速さ、コントロール性、信頼性といった走りの性能に直結している。レクサスのデザイナー陣にとって、こうしたアプローチは初めてのことだったという。
その車体は剛性をさらに向上させながら、従来スチール製だったシャシー関連パーツをアルミ化したり、エンジン内の駄肉を削り取ったりという地道な作業によって、20kgの軽量化を実現している。
ゴム製のマウント類、ブッシュ類の硬度も高められており、快適性より走りという姿勢は鮮明だ。もちろんサスペンション、電子制御などありとあらゆる部分にまで改良の手は及んでおり、ミシュラン製のタイヤまで専用の新設計とされている。
今や希少な自然吸気の5リッターV型8気筒エンジンは最高出力こそ4psアップの481psにとどまるものの、吸気系の改良、制御のリファインなどによりドライバビリティを向上。加速を高めるべくファイナルギアがローギア化されているのも注目のポイントだ。
新たに、サーキットにおける走行性能を妥協無く追求したモデルとして“パフォーマンスパッケージ”も用意された。こちらはCFRP製の外板パーツや固定式リアスポイラーなどの空力デバイス、専用のサスペンションを採用し、空力性能とシャシー性能を一層向上。カーボン製の車体補強ブレース、カーボンセラミックブレーキや軽量鍛造アルミホイール、チタンマフラーなどの採用で一層の軽量化も図っている。何しろ数百グラムを削り取るためにステアリングの位置調整が電動から手動に改められたりもしているのだから、その徹底ぶりは凄まじい。その果実はベース車より更に50kgも軽い、1720kgの車重である。
自然吸気エンジンの魅力を存分に堪能
テストの舞台は富士スピードウェイ。1.5km近くにもなる長い直線を持つレーシングコースは、この高性能車の進化を余さず体感するには最良の舞台で、ベース車とカーボンエクステリアパッケージ装着車、そしてパフォーマンスパッケージを乗り換えながら試乗を行なった。
いずれにも共通して改めて感心、いや感動させられるのが5リッターV型8気筒自然吸気エンジンの豪快な吹け上がり、そして有り余るほどのパワーだ。吸気系の改良でエンジン本体のレスポンスを高める一方、スロットル操作に対する反応はよりリニアなものとされ、その上でファイナルギア比が下げられたこともあって、一層イキイキとしたレスポンスと正確な反応を示し、加速自体も豪快そのもの。
しかも、トップエンドに向けて心地よいサウンドを響かせながらパワーを絞り出していく様は、ドラマチックと評するのがぴったりだ。ドイツのライバルたちがターボ化に走る中、貫かれた自然吸気の魅力を存分に堪能できる。
SPORT+モードにおいて、Dレンジのままでサーキット走行にも対応できるドライブモード切り替え制御を採用したAI-SHIFT制御によって、8段DSPSの変速もさらに切れ味を増している。富士スピードウェイではもちろん、もっとタイトで変速頻度の高いコースでは、相当な武器になるに違いない。
このパワートレインにもそうだが、シャシー性能の進化にも大いにうならされた。まず全モデルに共通していえるのが、あらゆる場面で車体姿勢のフラット感が高まり、また挙動のつながりがリニアで唐突感のないものになったことだ。簡単に言えば、速さを増しているけれど、むしろ乗りやすくなっている、そのパフォーマンスを引き出しやすくなっている。そんな印象である。
TVDと呼ばれる左右後輪のトルク配分を変化させることで車両姿勢の自在なコントロールを可能にするオプションも、RC Fの走りを特徴づける要素だ。“CIRCUIT”に設定すれば安定感際立ち、“SLALOM”に切り替えればクルマが小さくなったかのような軽快なフットワークを楽しめる。
ドリフトも難儀ではない優れたコントロール性
カーボンエクステリアパッケージ装着車は、ボンネット、ルーフ、トランクリッドという重心から離れた部分を合計約10kg軽量化するもの。フットワークは明らかに切れ味を増していて、一度こちらに乗ったら選ばないわけにはいかなくなってしまいそうだ。
そして真打ちが、パフォーマンスパッケージである。弦本祐一チーフエンジニアによれば、Sport S+モードは、まさに富士スピードウェイのような路面のフラットなサーキットで最高のパフォーマンスを発揮できるようセッティングされているという。
その走りは、さらに軽快で、そしてソリッド。ステアリング操作に対する応答が素早く正確で、まさに意のままに操ることができる。それには特にリアの押さえがしっかりと効いたスタビリティの高さも大いに貢献している。盤石の安定性を実感できるからこそ、自信をもってステアリングを切り込み、またアクセルを思い切り踏み込めるのだ。
実際、481psものパワーがあるだけに、富士スピードウェイではほとんどのコーナーで容易にテールスライドに持ち込むことができるのだが、その際のコントロール性は素晴らしく、ドリフトだって決して難儀ではない。この日も存分に楽しんでしまった。従来のRC Fは、特にウェット路面でのリアの安定感が足りない印象があったが、これならきっと大幅に改善されているはず。機会があればそれも試してみたい。
「このクルマはFの再定義です」と、弦本チーフエンジニアは胸を張る。サーキットでの圧倒的なパフォーマンスと、それをあらゆるレベルのドライバーが実感できる懐の深さは、まさに“F”の走りの次元を、さらに一段上のレベルへと引き上げるものだった。
新しいRC Fは、メルセデス・ベンツ「AMG C63」にBMW 「M4」、アウディ「RS5」といったドイツからのライバルたちとも伍して戦え、しかも他のどれとも違う独自のテイストを濃厚に備えている。走りを愛してやまない人にとって、魅力的な選択肢の登場であることは間違いない。
Spec
Lexus RCF|レクサス RCF
ボディ|全長 4,710 × 全幅 1,845 × 全高 1,390 mm
ホイールベース|2,730 mm
車両重量(EU)|1,770kg
1,760kg(Carbon Exterior package)
1,720kg(Performance package)
エンジン|4,968cc V型8気筒
最高出力| 354 kW(481 ps)/7,100rpm
最大トルク|535Nm(54.6kgm) /4,800 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|FR
サスペンション前|ダブルウィッシュボーン
サスペンション後|マルチリンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク 対向6ポッドキャリパー
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク 対向4ポッドキャリパー
価格|1,021万円909円
1,099万6364円(Carbon Exterior package)
1,404万円(Performance package)
Lexus RCF|レクサス RCF
ボディ|全長 4,710 × 全幅 1,845 × 全高 1,390 mm
ホイールベース|2,730 mm
車両重量(EU)|1,770kg
1,760kg(Carbon Exterior package)
1,720kg(Performance package)
エンジン|4,968cc V型8気筒
最高出力| 354 kW(481 ps)/7,100rpm
最大トルク|535Nm(54.6kgm) /4,800 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|FR
サスペンション前|ダブルウィッシュボーン
サスペンション後|マルチリンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク 対向6ポッドキャリパー
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク 対向4ポッドキャリパー
価格|1,021万円909円
1,099万6364円(Carbon Exterior package)
1,404万円(Performance package)
問い合わせ先
レクサス インフォメーションデスク
Tel.0800-500-5577(9:00-18:00、365日年中無休)
https://lexus.jp/