大きく若返りが図られた新型トヨタ カローラに試乗|Toyota
CAR / IMPRESSION
2019年11月27日

大きく若返りが図られた新型トヨタ カローラに試乗|Toyota

Toyota Corolla|トヨタ カローラ

Toyota Corolla Touring|トヨタ カローラツーリング

フルモデルチェンジしたカローラシリーズに試乗──TNGAによるジャパンモデルの出来栄えは?

1966年にデビューし、これまで世界150カ国以上の国と地域で4,750万台が販売されてきた大ベストセラーカー、トヨタ「カローラ」。フルモデルチェンジを受け、この9月にデビューしたその新型に試乗した。

Text & Photographs by HARA Akira

TNGAで若返ったカローラ

1966年にデビューしたトヨタが世界に誇るロングセラーモデル「カローラ」。ライバルの日産サニーとともに成長を続け、今や世界150カ国以上の国と地域で販売され、4,750万台という途方もない累計生産台数となっている。
12代目となる新型カローラは、2018年6月にハッチバックの「カローラスポーツ」が先行デビュー。今回試乗したセダンの「カローラ」と、ワゴンの「カローラ ツーリング」は、19年9月に遅れて登場したことになる。横浜市内で開催された新型カローラの試乗会に参加し、その出来栄えを確かめてみた。
新型カローラは、低重心でスポーティなスタイリング、走る楽しさと取り回しの良さの両立、安全性能やコネクティッドサービスを追求するTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の設計思想を積極的に採用して開発が行われた。今やカローラユーザーの平均年齢がセダンは70歳、ワゴンは60歳という現状を打破し、若返りを果たすための“特効薬”というわけだ。
果たして新型カローラのボディサイズは、全長4,495×全幅1,745×全高1,435mm、ホイールベース2,640mmで、ツーリングは全高が1,460mm。グローバルモデルに比べて全長、全幅、ホイールベースを縮小しつつ、先代モデルより大きいという日本専用ボディをまとっている。
これまでの5ナンバー死守から3ナンバーへと大きくなったが、まさにトヨタでなくてはできないスペシャルモデルといってよい。試乗できたのはワゴンタイプの「カローラツーリングHYBRID W×B」、セダンの「カローラHYBRID W×B」、同じくセダンの「カローラS(1.8Lガソリン)の3台で、その後比較のために新旧の「カローラ スポーツ」にも乗ってみた。

良品廉価と時代のニーズに合わせた変化

ワゴンボディの「カローラツーリング」は、サイドビューがなかなか素敵だ。グレーメタリックの大径17インチアルミと215/45タイヤに、最低地上高が低く見えるデザインがマッチしていて、コンパクトながらのびのびとした印象を与えてくれるからだ。ラウンドを強めた一文字形状のLEDヘッドランプや大型台形のロアグリルフレームとメッシュグリルなども含めて、“ちょっと前”のカローラとは全く別物のイメージだ。
リアハッチを開けて出現する、荷室床面の高さを2段階で調節できるリバーシブルデッキボードは上下左右にフラットな形状を提供してくれ、さまざまなスポーツシーンでの使用を想起させてくれる。これも若々しい印象を与えるファクトの一つだろう。
最高出力72kW(98ps)、最大トルク142Nmの2ZR-FXE型1.8リッターエンジンと53kW(72ps)/163Nmのモーターを組み合わせたリダクション機構付きTHSⅡハイブリッドシステム(電気式無段変速)の走りもなかなか良い。1.5リッターから1.8リッターに排気量を拡大したおかげで、加速時に主動力をモーターからエンジンに受け渡した際のパワー感の変化や落ち込みの量が少ないからだ。
足回りも同様で、17インチのハイトの低いタイヤ(ヨコハマ製)を装着しているにもかかわらず、段差を通過する際などの振動をうまく逃している印象だ。さすがに荒れた路面では、荷室から「ザー」という騒音が侵入してくるが、これはワゴンボディの宿命かもしれない。

オヤジくささを一掃するアグレッシブなイメージのセダン

ワゴンで感じた騒音面でのわずかなネガポイントを解消しているのが、次に乗ったセダンの「カローラ」だ。室内とトランクスペースが分かれていて、ロードノイズの侵入がより少ないからだ。
小型で上質なセダン、という言葉は今や死後になりつつあるが、今回のカローラで見事復活。ワゴンより後部が軽く、普通の交差点を曲がる際でもステアリング一発でボディがスッと切れ込んでいく楽しさも味わえ、完成度は高そうだ。
セダンのカローラ、といわれるとなんだかオヤジくさいイメージが想起されるが、試乗車のブラッククリスタルシャインボディとダークカラー17インチホイールの組み合わせはそれらを一掃するアグレッシブさがある。
ワゴンでは、荷室スペースのチェックに気を取られて見逃してしまったが、セダンの後部ドアを開けてみると、靴の爪先をぶつけた跡が結構残っていた。グローバルモデルより短いホイールベースに起因するわずかに狭い後席の足元スペースが引き起こした現象なのだろう。
セダンのもう一台、1.8リッターガソリンエンジン搭載車は、1つのパワートレインによる軽快な走り味が楽しめ、価格を抑えたいユーザー向けとして十分な性能を発揮してくれる。

若者にもアピールできることが目標の一つ

試乗後話を聞いたカローラの上田泰史チーフエンジニアは、「世界でも日本でも多くのユーザーに永く愛されてきたカローラですが、発表会でも公表したように現在は60〜70代がユーザーの平均年齢になっています。このままではカローラという名前が消えてしまう。今回新型を開発したのは、若者にもアピールできることが目標の一つで、そこは技術者としての“意地”でしかありませんでした」と語る。
これに答えたのがMS車両性能開発部の小林直史さんとMSシャシー設計部の志満津了さんで、「もっといいクルマづくりのために、我々は運転がしやすく、ずっと乗っていたくなるクルマを追求しました。そのためには、路面からの外乱に対して、乗員が予測できる動きにすることで体が動かされず、目線が安定する挙動になります。クルマの『動き量』だけでなく『動き方』に着目し、人間の姿勢補正能力を最大限活かす動き方を研究したのです。」と説明。
カローラスポーツ
具体的には、ダンパーの減衰力の前後・伸圧のバランスを最適化し、ロール発生時にフロント側への荷重移動を起こすセッティングにしたという。この結果、目線の動かされにくさ、旋回姿勢の決まりやすさ、ライントレース性が大きく改善されたのだという。
「肝心なのは、狙ってそれを実現できたことです」と若い技術者は語ってくれた。確かに新旧のカローラスポーツで乗り比べてみると、目線の安定感やステアリングを切った時のスッキリ感が、新型にアドバンテージがあるように感じた。あのカローラがこんなところまでこだわって作られるなんて……。ぜひ一度乗ってみることをお薦めできる良いクルマに仕上がっている。
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