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2019年12月24日
受け継がれる初代LSのDNA──レクサス30周年イベント「LEXUS MILESTONES」リポート|Lexus
Lexus|レクサス
レクサス30年の歩みを新旧モデルの比較試乗で体感
初代「LS」がデトロイトモーターショーでデビューし、レクサスブランドがスタートして2019年でちょうど30年。ブランドの歩みを振り返るべく、レクサスは南米のコスタリカで「LEXUS MILESTONES」というイベントを開催した。レクサス新旧各モデルの比較試乗という興味深いプログラムが用意された同イベントから、レクサスのクルマづくりに迫る。
Text by YAMAGUCHI Koichi
新旧モデルが一堂に会す
例えばメルセデス・ベンツの歴史は、1886年にドイツ人エンジニアであるカール・ベンツが設立した自動車メーカーに端を発する。一方、BMWがスタートしたのは、1916年のこと。この年、グスタフ・オットーが、航空機のエンジンを手掛けるバイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ(バイエルン発動機製造)を立ち上げたのだ。また、現在のアウディの礎となったアウディ、ホルヒ、ヴァンダラー、そしてDKWという4つのブランドが誕生したのは、19世紀末だった。
こうして、欧州の競合ブランドが100年以上の歴史を誇ることを鑑みると、レクサスがいかに早熟だか分かるだろう。彼らより圧倒的に短い歩みのなかで、北米をはじめとするマーケットで同じ土俵に立ち、ある部分で凌駕する存在になり得たのだから。
日本発のラグジュアリーブランドであるレクサスが産声を上げたのは、1989年のこと。同年1月に開催された北米国際モーターショー(デトロイトモーターショー)で、初代レクサス「LS」がワールドプレミアされ、レクサスの歴史がスタートしたのだ。
2019年でちょうど30周年を迎えたレクサスは、これまでの歴史を振り返るべく、中米コスタリカの高級リゾート地であるパパガヨ半島を舞台に、「LEXUS MILESTONES」と題したメディア向けのイベントを開催した。
LEXUS MILESTONESでの目玉が、「LS」「RX」「SC」「GS」など、レクサスブランドを象徴すモデルの初代が一堂に集められこと。さらに、「LS500」や「LC500」をはじめとする最新モデルも用意され、新旧各車の比較試乗ができたのだ。
初代LSの圧倒的な静粛性
最初に試乗したのは、レクサスの歴史の幕開けを担ったフラッグシップサルーン「LS 400」である。LSといえば、優れたNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)性能をアピールすべく、なみなみと注がれたシャンパングラスをボンネット上にピラミッドのように積み上げ、シャシーダイナモ上でエンジンを回転させるビジュアル(北米向けCM)に、当時インパクトを受けた記憶があるが、走り出してまず印象的だったのは、やはりNVH性能の高さだった。
例えば、コスタリカのカントリーロードを100km/h前後で走っていても、エンジンや駆動系、そしてタイヤが発するノイズが極めて低く抑えられている。現在の基準からみても十分なレベルといえるほどの静粛性なのだ。乗り心地もなめらかで、路面からの突き上げを優しくいなしてくれる。当時、この初代LSの快適性に、欧米の競合たちは大きなインパクトを受けたと伝え聞くが、なるほど、実際に試乗してみるとそれも理解できる。バランスのとれた上質な乗り味は、まさに現在のレクサスの礎になっていると感じた。
実は試乗前に、レクサス30年の歴史を、AR(拡張現実)による映像で振り返るプレゼンテーションが行われたのだが、そのなかで初代LSの開発ストーリーが紹介された。
当時トヨタには、メルセデスやBMW、キャデラックといった欧米のプレミアムブランドに比肩する高級車が存在していなかった。そんな状況下で、北米市場からの富裕層向けラグジュアリーカーを求める声を受け、豊田英二社長(当時)は「他に類を見ない世界最高の自動車を作り上げる」ことを決定。15名の精鋭エンジニアによりプロジェクトがスタートしたのが1984年のことだった。
開発チームを任された鈴木一郎チーフエンジニアは、当時としては実現が困難といわれるほどの技術目標──最高速度250km/h、燃費22.5mpg(マイル・パー・ガロン)、空気抵抗値0.28、そして100km/h走行時の騒音58〜59デシベル──を設定した。
鈴木氏自身が“とてつもなく高い”と語った目標値をクリアする、まったく新しいフルサイズサルーンを開発するために、のべ1400人のエンジニアが動員され、製作されたプロトタイプは450台、実施されたロードテストは地球100周分の距離に相当する2700万マイルに達したという。こうした高い志と、エンジニアたちによるたゆまない努力があったからこそ、初代LSは欧米の競合メーカーにインパクトを与えるほどの存在になり得たのだろう。
レクサスにおける電動テクノロジーの礎を築いたRX400h
つづいて、1998年にデビューしたレクサス初のSUV「RX300」に試乗した。世界で初めてモノコックボディが採用されたSUVで、今ではすっかり一般的となった、洗練されたラグジュアリークロスオーバーの草分けとなるモデルである。乗ってみると、例えばハンドリングはおおらかで、最新のRXのようなスポーティな乗り味ではないが、上質な乗り味や安心感のあるドライブフィールなど、やはりLSと同様の価値を備えていると感じた。
一方、レクサス初のハイブリッド車として2005年にデビューした「RX400h」は、優れたハイブリッドテクノロジーによる、駆動系の極めてなめらかなフィールが印象的だ。アクセルを踏み込むと、ボディがすべるように速度を増してしていく。その様にラグジュアリーカーならではの上質さを感じるのだ。また、ドライビングポジションは初代RXに比してさらに乗用車的になっており、ハンドリングも極めて素直なのが好印象だった。
ちなみにレクサスは、同モデルの導入以来、すでに150万台のハイブリッド車を世に送り出しており、現在ではハイブリッドのみならず、PHV(プラグイン・ハイブリッド)、EV(電気自動車)、FCV(フューエルセル・ビークル)、さらに4輪それぞれに駆動力となるモーターを設置し、緻密な車両制御を実現させるインホイールモーター車などの開発を進めている。RX400hは、こうしたレクサスにおける電動テクノロジーの礎を築いたモデルといえるだろう。
レクサス初のクーペとして1991年に北米市場に導入され、日本では3代目ソアラとして人気を博した「SC400」にも試乗したが、やはり初代LSに通じる上質感や静粛性の高さが印象的だった。
今こそブランドのDNAを見つめ直すとき
最新のレクサス各モデルのステアリングも握ったが、改めて「LC」の登場が昨今のレクサスにおいてエポックメイキングな出来事だったかが理解できた。2012年のデトロイトモーターショーに登場したコンセプトカー「LF-LC」そのままの、ダイナミックでエモーショナルなエクステリアや、クラフツマンシップとラグジュアリーが邂逅したと感じさせるインテリア、新しい時代のスポーツカー象を感じさせる上質かつスポーティなパワートレーン、そしてクルマと一体化したような感覚を得られるファンなハンドリングなど、レクサス車が提案する新たなる価値を具現していると感じさせるからだ。
実際、レクサス車の開発に携わるエンジニアは、SUVやセダンなどカテゴリーの異なるモデルであろうとも、スタイリングから走りに至るまで、LCが示した指針を踏襲するクルマづくりを行っていると聞く。
「LCの開発を通して、走りについて自分たちのアイデアをかたちにすることができ、さまざまなノウハウを蓄積することもできました。だからこそ、我々はいま、原点回帰といって、自分たちのブランドのDNAを見つめ直すことを大切にしています。やはりレクサスのDNAは、初代LSが提示した圧倒的な静粛性と、極めて優れた乗り心地、そして造りの良さに集約されます。その部分で独自性を打ち出すのが、大前提だと思っています」
チーフエンジニアとしてLCの開発を指揮したLexus International Executive Vice Presidentの佐藤恒治氏(2019年12月現在)は、イベント会場でそう力強く語った。CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)という言葉がさまざまなメディアで語られるように、クルマを取り巻く環境が100年に一度ともいわれる変革期を迎える現在だが、レクサスが60周年、90周年、そして100周年を迎えても、彼らのクルマづくりの根源は変わることはないだろう。
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