Milano Design Week|ミラノ デザイン ウィーク 2017を巡る
DESIGN / FEATURES
2017年5月2日

Milano Design Week|ミラノ デザイン ウィーク 2017を巡る


Milano Design Week 2017|ミラノ デザイン ウィーク 2017


ミラノ デザイン ウィーク 2017を巡る


デザインの祭典ともいえるミラノ・デザインウィーク。家具のみならず、あらゆるアートが世界中から集まるイベントが、2017年は4月4日から9日にかけて開催された。


Text by OGAWA Fumio



今年のアワードはLG×吉岡徳仁氏の作品に


そもそもは家具の見本市として、ミラノを中心とした家具メーカーの売り込みのために始まった見本市。ライフスタイル全般への目配りがいまは企業価値を上げるとあって、自動車メーカーや家電メーカーや食品メーカーまで熱心に参加するまでに成長した。


ミラノ・サローネと呼ばれる国際見本市会場を使った家具を中心の見本市と、フオリサローネと称される市内全域でのインスタレーション(空間も使った展示)とで構成される。


最後にはミラノ市を含めた主催者によるアワードが授与されるのも話題になる。2017年のグランプリは韓国のLGがデザイナーの吉岡徳仁氏と組んだ「S.F.-Sense of the Future」だ。



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パナソニックデザインが西陣織りとのコラボレーションで作りあげた「織ノ響」


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開化堂の茶筒のなかにスピーカーユニットを仕込んだ「響筒」



「コンセプトとテクノロジーと物語性とエモーションを一つの物体のなかにうまく合体させた」。そう評されたこのインスタレーションは、有機エレクトロルミネッセンスの分野で大きく業績を伸ばしているLGの技術を生かしたもの。


同じアワードのなかで「ベスト ストーリー テリング」賞はパナソニックに贈られた。ブレラ地区に1700年代に作られた美術アカデミーの荘厳な建物を舞台に、3つのパートで構成された同社のインスタレーション「Electronics Meets Crafts」。


なかでも注目されたのは家電を手がけるパナソニックデザインとアプライアンス社が、京都の伝統工芸を引き継ぐ若手ユニット「GO ON(ゴオン)」と組んだプロトタイプの数かず。


高品質の茶筒で知られる開化堂の茶筒のなかにブルートゥースのスピーカーユニットを仕込んだ「響筒」。西陣織に織り込まれた金銀箔がセンサーとなり静電気反応してスイッチがオンになり音を奏でる「織ノ響(おりのひびき)」も驚きだった。


美的な質の高さと技術との両立という点ではAGC旭硝子による「Touch」は注目に値するものである。




Milano Design Week 2017|ミラノ デザイン ウィーク 2017


ミラノ デザイン ウィーク 2017を巡る (2)



自動車メーカーもこぞって参加


ガラスで出来たドラムスやシーソーと名づけられたオブジェは審美的な価値が高い。いっぽうで、昨今のガラスは「触れる」ものが多いという点に注目した同社では、スマートフォン用のガラスをドラムスの“皮”の代わりに接着。


叩くとちゃんとドラムスの音がするガラス製のドラム。いっぽうでガラスを曲げる技術に注目したプロフェッショナルも多く、問合せは多数あったと広報担当者は話していた。


アイシン精機はトリエンナーレを会場に「The Next Frontier in Mobility」なる自動運転をイメージしたインスタレーションを展示。


デザイン エンジニアの吉本英樹氏による繭のようなシェイプと光を組み合わせて「コネクテッド」というテーマにもとづいた作品など、印象的だった。



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AGC旭硝子の「タッチ」は、叩くとちゃんとドラムスの音がするガラス製のドラム


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繭の中にサッカーボールを変型させたフォルムのオブジェが収まるアイシン精機の「cocoon」



自動車メーカーがミラノ・デザインウィークに熱心なのはレクサスの例でご存知のとおり。2017年はほかのブランドもおもしろいものを見せてくれた。


MINIはレクサスと並んでこのイベントに熱心に取り組んでいるブランドだ。2017年はトルトーナ地区の昨年までレクサスが使っていた広い会場で「MINI Living Breathe」というインタレーションを展開した。


パートナーは米ニューヨークの建築事務所SO-IL。コンセプトは都市生活の未来を衣食住と広範囲で考えていくことだったようだ。



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MINI Living Breatheで米のSO-ILによるエコ住宅ではこんな寝室が提案されている


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フェラーリのイメージでポルトローナフラウが手がけたオフィスチェア



なかでも目を惹いたのは会場にそびえたった高さ10メートルにおよぶ3人のためのエコフレンドリーな住居の提案。見学者で押すな押すなの大盛況だった。


クルマでいえば、フェラーリやランボルギーニはミラノの中心地から電車で20分ほどの国際見本市会場に出展。クルマをイメージソースにした家具メーカーとのコラボレーションを発表した。


いっぽうアルファロメオやマセラティは市内のフオリサローネでの出品。なかでもマセラティはベネツィアのユニークな家具ブランド、ステイグリーンと組んだ。



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ランボルギーニはリーバ1920とのコラボレーション家具を展示


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サローネに出展したカリモクの「エレファントソファ」



真っ白で上質な空間に置かれたのは、伊藤節氏と伊藤志信氏がデザインした家具。「ダンダン」と名づけられたそれは段ボールを素材にしたエコフレンドリーなものである。


もちろん、フロスといった照明メーカーに加え、ポルトロナフラウ、ドリアデ、カルテル、ザノッタ、マジスといった日本でもよく知られている家具メーカーは大規模な展示を見本市会場で展開。


日本の広葉樹を使うこだわりの家具メーカー、カリモクも2017年は見本市会場にブースを持つという「念願」(同社のPR担当者)を達成。ウッドをうまく活かしたやわらかい雰囲気の製品が来場者を惹きつけていた。