デザインと室内パッケージの両立を目指した意欲作──マツダCX-30に試乗|Mazda
CAR / IMPRESSION
2020年1月6日

デザインと室内パッケージの両立を目指した意欲作──マツダCX-30に試乗|Mazda

Mazda CX-30|マツダCX-30

マツダCX-30試乗

マツダの新世代商品の第2弾となるコンパクトクロスオーバーSUV「CX-30」。スタイリッシュな外観が大きな話題となった小型ハッチバック「マツダ3」のSUV版というべきモデルで、現在最も人気の高い小型SUV市場にあっても、飛び抜けてレベルの高いデザインを採用している。ではその走りはどうか。都内で開催された試乗会に参加して確かめてみた。

Text & Photographs by HARA Akira

ミクロン単位の精度にこだわったエクステリアデザイン

エクステリアは、微妙な曲面をミクロン単位で精度を上げていくことを、デザイン、開発、生産まで各スタッフが一体となって進め、ボディの表現というものを細部にわたって再現。また、インテリアはクラフツマンシップの領域で、単に良い素材を使うだけでなく、人間の視覚、触覚を大切にした方法や技術を取り入れたという。
外観寸法に注力したというCX-30のボディサイズは、全長4,395×全幅1,795×全高1,540mm。全長はCセグメントハッチバックの平均である4,400mmより5mm短く、全幅は狭い路地でもすれ違いを含めて通行しやすい1800mm以下。全高は立体駐車場にも対応する1550mm以下とすることで、都市部での機動性を上げることに成功している。
エクステリアはマツダ3のSUV版といっていいほどよく似ている。面白いのはボディサイドの凹みへの映り込みで、CX-30では右側が“Z形状”、左側が“S形状”にカーブしている。実はこれ、マツダ3とは正反対。またボディ下部をブラック樹脂でカバーすることで、腰高に見えない工夫もされている。
インテリアは、試乗車のブラック/チャコールのツートーンレザーや細かく整ったステッチ、パッドを多用したダッシュボードなど、同クラスのSUVに比べたらかなり上質なイメージを与えてくれる。こちらもデザイン力がふんだんに注ぎ込まれているのだ。
シート高は、日々の生活で乗降のしやすさを優先した使いやすい高さに設定され、左右の座席間隔はCX-5と同じ。ホイールベースはCX-3より85mm長いので、後席の足元はそれより明らかに広い。
その上でラゲッジルームを荷物の多いヤングファミリーに合わせたサイズとし、結果的にスーツケースとベビーカー両方乗せることができるほどの容量(430リッター)を確保した。ハッチの開口幅や高さも大物を乗せやすいサイズとし、上級モデル並みのパワーゲートを備えている。

1.8リッターディーゼルモデルで走ってみた

エンジンラインナップは、2.0リッター ガソリンの「G」、1.8リッター ディーゼルの「D」、間もなく登場する火花点火制御圧縮着火の「X」という3種のパワートレーンがあり、走る喜びを体現したという。
今回試乗したのはクリーンディーゼルモデルのXD Lパッケージで、最高出力85kW(116ps)/4,000rpm、最大トルク270Nm/1,600〜2,600rpmを発生するS8-DPTS型1.8リッター4気筒ディーゼルエンジンを搭載する。
外で聞こえていたガラガラというディーゼル音は、車内ではほとんど気にならないほど静かで、走り始めてもそれは同じ。風切音やロードノイズがしっかり抑えられた静かな室内に、少しだけ侵入してくる、と言った類のものだ。
6段ATで前輪を駆動する走り自体は、エクステリアほど強い印象を与えるものではなく、いたって実用一点張り。ここ一発の加速が欲しいような場面では、同社の2.2リッター ディーゼル搭載モデルがあったらな、と思わせる仕上がりだ。
エクステリアの素晴らしさに圧倒され、期待値が上がりすぎていたせいかちょっとガッカリした部分だ。
足回りは、首都高の段差ではコツコツとした突き上げをドライバーの腰に伝えてくる少し硬めの欧州車風の設定。ただし上半身はピタリと安定する上質なシートのおかげで、長距離ドライブをしても結果的に疲れは少なそうだ。
一方ママが近所のお買い物に使う、というような場面ではもう少し柔らかい方が、と思わせるかもしれない。スタイル優先でウインドウ面積は狭くても、運転時に必要な視界は十分に確保され、コンパクトなボディサイズも相まって日本の環境にはジャストフィットするはずだ。
試乗中に気になったのは、まずゲート式駐車場への出入りのシチュエーションで。発券機にピタリとクルマを寄せないと、上下の薄いフロントウインドウから身を乗り出しにくく、カードを抜き差しするのにちょっと苦労する。都市部ではこうした場面が多いだけに気に掛かるのだ。
助手席の乗員は荷物を抱えて乗る時にも要注意。サイドミラーの見通し角度が狭いため、大きな資料や荷物を膝上に抱えると、ドライバーが背伸びをしようがどうしようが、全く見えなくなってしまう。乗員全員が正しい姿勢で正しく乗ると、全く問題はないのだが……。

ジャストサイズのパートナー

「CX-5、マツダ3に続くマツダの第3の機軸車種とすることを目指しました」と語るのは、CX-30の開発主査である佐賀尚人氏。
「創造性溢れるデザイン、室内パッケージ、ダイナミック性能をこれまでより高いレベルで融合させました。従来のクロスオーバーSUVは、週末のレジャーに特化した使い道が主でしたが、今日では日常のあらゆる場面で使われる機会が多くなり、ユーザーのニーズは変化しました。また、それに適合する車種も増えました」とのこと。
今や日本市場では、コンパクトクロスオーバーがCセグメントのハッチバックの販売台数を上回った。それほど成長しているカテゴリなのだ。それに応えるべく、どこにでも気軽に出かけられるジャストサイズの商品として開発したのがCX-30なのだという。
「着目したのは人生の転換期を迎える方々。つまり独身からカップルに、結婚してヤングファミリーにと短い時間で家族構成も生活形態も変化する。そうした方々は、ニーズにフィットしたクルマを選ぶのが大変です。そういう時こそ、人生の輝きを提供できる“明日を彩るパートナー”であり得たい」と考えたのだそうだ。
ただ、使いやすいサイズの中でデザインを重視すると空間の満足度が低くなり、逆もまたそう。CX-30では、そうしたトレードオフの関係を、「魂動」デザインの良さを生かすことで克服。
「デザインの良さをキープしながら空間の満足度を上げ、独自のポジションを築くことが開発の狙いだった」と説明してくれた。CX-30は、デザインと室内パッケージの両立を目指した欲張りグルマなのである。
身内のCX-3をはじめ、トヨタ「C-HR」、ホンダ「ヴェゼル」、スバル「XV」など人気のコンパクトSUVが目白押しの市場に登場したCX-30。デザインやサイズ感、ユーティリティ性がユーザーにアピールし、月間販売目標の2,500台を上回る計画を上回る好調な滑り出しを見せているという。
問い合わせ先

マツダコールセンター

Tel.0120-386-919(平日9:00〜17:00、土日祝9:00〜12:00 13:00〜17:00)
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