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2021年2月15日
外観のイメージとはかけ離れたスポーティな感覚のドライブが楽しめる──新型ディフェンダーに試乗|Land Rover
Land Rover Defender|ランドローバー ディフェンダー
新型ランドローバー ディフェンダーに横浜で試乗
2019年、71年ぶりにフルモデルチェンジを受けランドローバーのアイコン的モデル「ディフェンダー」。先代に比してオンロード性能が段違いに向上したといわれる同モデルに横浜で試乗した。
Text by FUMIO Ogawa|Photographs by KAWANO Atsuki
モノが好きな人の心をつかむプロダクト
シェルジャケットやクライミングの雰囲気をもったシューズなどを街着に選ぶのと、けっこう共通しているように思える。英国ランドローバーが手がけるSUV「ディフェンダー」のデザイン感覚だ。1948年にジープの英国版として開発されたオフローダーである初代の雰囲気をうまく活かして、モノが好きな人の心をつかむプロダクトだ。
2020年夏に日本に導入された、新しいディフェンダー。いろいろなメディアで書かれているので、特徴については、読者の方が先刻ご承知かもしれない。古くて新しいともいえる、このグッドデザインドビークルは、ボディが2種類、ロングホイールベースの「ディフェンダー110(ワンテン)」とショートホイールベースで2ドアの「同90(ナインティ)」が用意される。
丸型をモチーフにしたヘッドランプをはじめ、キャビンの造型や、後席背後のルーフにもうけられた明かりとりのアルパインライト、さらに丸型のランプを左右に2灯ずつ縦に並べたリアビューなど、ところどころにオリジナルのデザインを活かしている。インテリアも同様で、わざと外板がむき出しになっているイメージを活かしている。
デザインのテーマはオリジナルを特徴づけていたディテールを今風に表現すること
ディフェンダーのデザイン哲学について、2019年夏に、ランドローバーデザインを統括する英国本社のジェリー・マクガバン氏にインタビューしたことがある。
「私たちは過去10年で、4バイ4のスペシャリストから、プレミアムラグジュリーブランドへと変身しました。そこで採用したのが、デザインを中心としたアプローチです。エンジニアリングは基礎が出来ていましたから、新しいあり方を模索しました。それまでデザインは機能の表現でよかったのですが、私たちはデザインによるブランド再構築を目指しました。最初はイヴォーク。つぎにディスカバリー。そして今回のディフェンダーと、ステップを踏んでラインナップを刷新してきたのです」
東京で出会ったマクガバン氏は、サビルローのテーラー、「ヘンリー・プール&Co.」で仕立てた、華やかなスーツを身にまといながら、デザインの背景を説明してくれた。
オリジナルを特徴づけていたディテールを今風に表現することにデザインチームは心を砕いたという。波打つようなプレスのボディパネル、しかもそこにはリベットがむき出しで打たれている。さらに、標準規格の丸型ヘッドランプや平板なウィンドウグラス……という具合。
ただし現代は、法規制の問題があり、同じデザインはできない。衝突安全性、歩行者保護、室内のエルゴノミクス、生産方式など、さまざまな要件を考えてデザインしないといけないからだ。オリジナルと似て見えても、底流にある考え方は、まったく別ものだという。
「当初は機能がシェイプを決めました オーネストな形、とデザイン用語では表現します。初代はデザインビークルでなくエンジニアビークル。みんなが愛情をもって付き合ってきました。今、同じデザインで成功すると思いますか。私はそうは思いません。なぜなら、人がなにに魅了されるかは、時代とともに変わるんですね。レンジローバーを見てみてください。新しいモデルが出ると古いモデルは古くさいと思うようになるのです」
日本にはまず110(ホイールベース3020ミリの4ドアモデル)から導入が開始された。前記のとおり、オリジナルとの関連性についてのマクガバン氏の言葉を引用したものの、実際のスタイリングのイメージソースは、1990年に「ディフェンダー」なる車名に変わった時期の車体だろうか。
スタイリングは個性的だ。オリジナルのディフェンダーも、東京などの市街地では意外なほどよく見かけるとはいえ、知らない人も多いだろう。でも知らなくても、今回のディフェンダーは魅力的に見えるのだ。マクガバン氏の言葉にあったように、本来機能のための形だったものを、うまく現代的にアレンジしたデザインゆえだ。
スペアタイヤは(わざと)トランクの外に背負ったスタイルだったり、頑丈なラジエタープロテクターを彷彿させるフロントマスクの突起物(もちろん歩行者保護の役目はちゃんと果たす)など、歴史的引用が上手なうえに、創造的なアイデアとして活きている。
大きさとか重さを意識させない走りが味わえる
横浜近辺で試乗したのは、「ディフェンダーSE P300」という2リッター4気筒ガソリンエンジン搭載車。最高出力は車名にある通り、300ps(221kW)、最大トルクは400Nm。SEというグレードは装備からいって、ガソリン車のラインナップでは頂点に位置づけられている。
エンジンは2000rpmからトルクがたっぷり出てくる。そこから4000rpmあたりがもっとも“おいしい”トルクバンドで、ふだん乗るときは、ちょっと回転を上げるようにして走ると、大きさとか重さを意識させない走りが味わえる。
いいのは操縦性で、カーブを曲がるときの動きなど、とても気持ちよく調整されている。特に速度が高めの、いわゆる中速コーナーなどでは、車体が傾いていく速度は抑えられ、外観や内装からくるクルマのイメージとはかけ離れたような、スポーティな感覚のドライブができるのが楽しい。
110は全長が4.9メートル。ある人にとってはそれで余裕ある室内空間が生まれるメリットとなっている一方、ある人にとっては少々大きすぎると思われるかもしれない。基本的に2プラス2で使うなら、ホイールベース2585mmで、全長4510mmの2ドア「90(ナインティ)」を考えていいだろう。
価格は「110」が619万円から。今回乗った「P300 SE」は738 万円だ。「90」は529万円からとなっている。ランドローバー史上最も多様なパーソナライゼーションができるのも、新しいディフェンダーの特徴。4種類のアクセサリーパック(「EXPLORER PACK」、「ADVENTURE PACK」「COUNTRY PACK」「URBAN PACK」)を含め、約170種類におよぶアクセサリーが選べるというのも特記すべきことだろう。
オプションをあらかじめ組み込んだ「CURATED SPEC(キュレイテッド・スペック)」なるオプション装着仕様も7つ、用意されている。たとえば「110 P300ファブリックシート&7人シート仕様」(691万2000円)とか「110 P300 レザーシート&7人シート仕様(パノラミックルーフ付)」(841万3000円〜)といった具合。
加えて、今回は試乗できていないものの、一応記しておくと、20年11月には、110に3リッター直列6気筒ディーゼルエンジン搭載モデルが追加発売された。電気モーターが発進時や加速時などにエンジンにトルクの上積みをするマイルドハイブリッドで、300ps(221kW)と、650Nm。かなり力強そうだ。ディーゼルモデルは「S D300」(754万円)から「X D300」(1124万円)まで3グレードの設定だ。
Spec
Land Rover Defender 110|ランドローバー ディフェンダー 110
- •ボディサイズ|全長4,945×全幅1,995×全高1,970mm
- •ホイールベース|3,020mm
- •車両重量|2,240kg(5シート) 2,280kg(5+2シート)
- •エンジン|1,995cc 直列4気筒DOHCターボ
- •最高出力|221kW(300ps)/5,500rpm
- •最大トルク|340Nm(34.7kgm)/1,750-3,000rpm
- •トランスミッション|8段AT
- •燃料消費率(WLTCモード)|8.3km/ℓ
- •駆動方式|4WD
- •最小回転半径|6.1メートル
- •価格|738万円〜
問い合わせ先
ランドローバーコール
Tel.0120-18-5568(9:00-18:00、土日祝日を除く)
https://www.landrover.co.jp/